妊活4年目の日常

赤ちゃんに会いたい!

映画『正欲』感想 (※ネタバレあり)

久々に映画を観ました。

朝井リョウさんの小説が原作の映画『正欲』です。

元々原作に興味あって読みたいなと思いつつ時が過ぎて、映画化されたということで映画館で鑑賞してきました。


以下、ネタバレが出てきますので知りたくない方は読まないようにされて下さい。



ネタバレあり!注意!


映画『正欲』の感想

この映画は、心が苦しくなりました。

新垣結衣さんが演じる女性が主人公だったのですが、彼女は特殊な性的指向の持ち主で、そのために生きづらさを感じています。

他人に到底理解してもらえないような性的指向を持つがゆえに、「普通の」恋愛や結婚はできない。

だから、「普通に」生きることは諦めている。

生まれ育った田舎で働きながらただただ淡々と暮らす。

もう…目が死んでました。


何一つ楽しそうじゃない。


仕方なく生きているという感じ。

(ガッキー可愛いのに!あの演技でガッキーのキラキラが皆無だった!すごい。)


そうやって生きてる中で、周囲からたびたび「普通」の価値観を押し付けられる主人公。


特に厄介だったのが、主人公の職場の同僚。

良かれと思って、「彼氏いないの?」とか、「30までに出産しないときついよ~」とか言ってくる同僚。


苦笑いしながら対応する主人公。


胸が痛かったです。


でも、私自身も、そういう風に無意識に自分の価値観を人に押し付けてしまったことがあるかもしれない。

そう思うと、自分の嫌な部分を見せられてる気がして余計に嫌になりました。




その同僚に対して、愛想笑いでなんとか対応していた主人公が、ある時我慢できずに、

「もう話しかけてこんで。」

と強く拒絶をするシーンがありました。

そのときにその同僚が、

「あんたがいつも1人で可哀想だからわざわざ話しかけてやってるのに、その態度はなんなん?」

とキレたんですけど、最高に嫌な気持ちになりました。


「普通」の価値観を押し付けてるけど、あくまで本人は善意のつもりなんですよね。

しかも、主人公のことを下に見ている。

すご~く嫌な感じでした。

でも、これもまた「自分も同じようなことをしているかもしれない…」と思わされて、また余計に嫌な感じでした。




主人公=

マイノリティ、生きづらさを感じている人々



同僚=

マジョリティ、一般的な思想や価値観


主人公とその同僚は、それぞれ上記を象徴していると感じました。


そして、この対立は、他の登場人物にも見られました。


稲垣吾郎さん演じる検事。

彼の息子は不登校なのですが、YouTubeへの動画投稿を始めたことで生き生きしだします。

でも、「学校に通うのが普通」という価値観から外れる息子を認めることができない。


検事として色んな犯罪や犯罪者に向き合っていることから、なおさら「自分は正しい」と信じきっている感じがしました。

まさに「一般的な思想や価値観」「世間一般の常識」の固まり。



稲垣吾郎さんのセリフで、

「人間にはバグのあるやつがいるんだよ!」

というようなセリフがあって、稲垣吾郎さん的には、

「バグがあるから間違いを犯す=犯罪者」みたいな感覚で言っていて、一見それは正しいのですが、

バグのある人間=マイノリティ

バグ=一般的、大多数的ではない指向や性質


という捉え方をすると、その「バグのあるやつ」は必ずしも「悪」ではないから、彼の発言は間違っているなと感じました。


でも、自分には理解できないような人を「あいつはおかしい」と思ったり、「悪」としてしまったりする感覚は、私にもあるなと思いました。



映画の冒頭から死んだ目をして生きてきた主人公が、自分と同じ指向を持つ幼なじみと再会し、一緒に暮らすようになります。


恋愛感情は持てないけれどお互いを理解し合える2人が幸せそうに過ごしているところは、唯一この映画で明るくてほっこりした場面でした。


生きづらさを感じる人も、幸せに生きられる道があるという希望を感じさせられました。


ただ、そんな幸せも、最後の最後に幼なじみが犯罪の疑いをかけられることで潰されそうになり、切なかったです。


幼なじみは自分と同じ指向を持つ人々と共に動画を撮影しただけでした。


しかし、撮影した仲間の1人が小児性愛者で、児童買春で捕まってしまったことで幼なじみも疑われてしまいます。


検事である稲垣吾郎に向かって「違う!その人は水フェチ!子供には手を出してない!」と訴えたい気持ちになりました。


でも、確かに「水フェチ」は理解できないよなぁ。


しかも、水フェチはOKで、小児性愛はNGって思ってしまったけど、どちらもマイノリティだと考えるとどちらも尊重されるべきなの?


犯罪を犯さなければ良いという基準で見たらいいのかもしれないけれど、そうなると小児性愛とかそういう指向の人は本当に生きづらいですよね。


犯罪を犯さないと自分の欲求を満たせないような指向を持つ人は、一体どうすれば…。





多様性が重視され、個性が尊重されるようになってきてはいるけれど、自分と違うものを理解するのは難しいです。


いや、理解するのは無理です。

そもそも人のことを完璧に理解するのは無理。


理解はできないけれど、色んな人がそれぞれ幸せに、自分らしく生きられる世の中であってほしいなと思います。


今まで生きてきて、「世の中には色んな人がいる」と分かったつもりになっていましたが、人間の多種多様さは自分の想像を遥かに越えるものだと肝に命じたいです。


自分と違う価値観の人を、理解はできなくても尊重できる人間になりたいです。


色々考えさせられる映画でした。


原作も読みたい。


ただ、映画もそうでしたが、朝井リョウさんの小説は人の嫌な部分(しかも、自分にもそういう部分あるよなというような)を見せつけられるので、私はきついです。笑。


エッセイはすごく面白いのに…。
笑いながら読んだ思い出。

小説は心に余裕がある時に読もうと思います。