妊活4年目の日常

赤ちゃんに会いたい!

誰の携帯が鳴ったのか?

今週のお題「人生最大のピンチ」

試験中に起きたピンチ

私は今から6年前の夏、教員採用試験の最中に人生最大のピンチに直面した。

小学生の頃から教師になることを夢見ていた私は、教員採用試験になかなか合格できずにいた。

毎年試験を受け続け、その年は5回目の受験。
一次試験をなんとか突破し、「今年こそきっと受かる!」と手応えを感じていた。


2次試験は、小論文と面接。
まず、90分の小論文の試験が実施された。

試験開始から30分ほどが経った頃だろうか。
私は順調に小論文を書き進めていた。
すごく集中していた。
その時だった。


(♪~♪~)(着信音)


小さいけれど、確実に鳴っている。
携帯の着信音。

試験官は気づいていないようだ。


(試験前に携帯の電源切るの常識でしょ!教師を目指す人が何やってんだか…)


集中力を削がれ、私は少しイラついた。


(~♪~♪)(着信音)


(あれ?…これ、私の鞄の中から聞こえてない?)


気がついた。鳴っているのは私の携帯だ。


思い出した。さっきメールを確認するために電源入れた。その後、電源切った覚えがない。


油断してた。いつもはバイブだけで、着信音が鳴るように設定してないのに。


バクバクバクバクバクバクバクバク…!!!!!


私の心臓の鼓動が急に速くなった。


(早く!早く!鳴り終わって!誰?!電話してきたの?!早く切って…!!!!バレたら試験落ちちゃうかもしれない…お願いやめて…!)


着信音が鳴っていたのは20秒ほどだったが、とても長く感じた。


いっそ自分から手を挙げて正直に言う?
椅子をガタガタさせて音をかき消す?


色々思い付いたけれど、ひたすら祈ることしかできなかった。
私は重罪を犯した。
携帯の電源切り忘れの罪。


(……)


携帯が鳴り止んだ。


(助かった…!!!!)


試験官は気づいていないようだ。


(助かった…!!!!私の教師への道はまだ閉ざされていない!)


しかし、試験は残り60分。
携帯は鞄の中。電源を切りたくても切れない。


私は再び祈った。
鳴らないで鳴らないで鳴らないで鳴らないで鳴らないで鳴らないで。



…試験は無事に終了した。
携帯の電源はすぐ切った。


その後、面接試験も受け終わり、私はその年の教員採用試験に合格したのであった。



授業中に起きたピンチ

それから5年後、私は教員として毎日忙しくも充実した毎日を過ごしていた。

ある日、担当していたあるクラスで授業をしていた。その時だった。


(~♪)(LINEの通知音)


小さいけれど、確実に鳴った。
電源を切り忘れた生徒がいるようだ。

授業中は携帯の電源を切るのがルールだ。
しかし、時には切り忘れることもあるだろう。

私は教科書の本文を読み、生徒に説明をした。
LINEの通知音は聞こえなかったことにして、授業を続けたのだ。

板書をし、生徒はノートをとる。
コツコツというチョークの音が響き、生徒は黒板を見ながらノートをとる。


(~♪)(LINEの通知音)


聞こえた。教室に響いた。
小さいけれど、聞こえる。
これはさすがに無視できない。
これを無視したら教師失格だ…!


「誰ですか?電源を切っていないのは?自分の携帯を確認しなさい。」


生徒たちがガサゴソと鞄から携帯を取り出した。


「誰ですか?電源を切り忘れていたのは?」


(生徒たち)「…(ザワザワ)」


(~♪)(チャイムの音)


授業の時間が終わってしまった。


「次の休み時間、今電源を切り忘れていた人は職員室に来なさい。」


私は教室を出て、職員室へ戻った。
休み時間になっても、誰も私のところへは来なかった。


もっと厳しく怒るべきだったのかもしれない。


ある先生は、同じような出来事が起きた場合、携帯電話を机上に出させ、生徒には触らせずに確認し、携帯を切り忘れた生徒を確実に見つけるそうだ。


私の話を聞いて、

「なんて生徒なの!!名乗り出てこないなんて!」

と、その先生は怒っていた。
私より怒っていた。


私は正直そこまで腹が立たない。
私は甘いのだろうか。
私は生徒に携帯を触る隙を与えてしまった。


名乗り出るように言ったが、電源を切り忘れたのか、それともいつも切ってないのかを確認して、注意するつもりだった。
そんなに怒るつもりはなかった。


携帯の電源を切り忘れていた生徒は、かつての私のように心臓をバクバクさせ、必死に祈っていたかもしれない。


名乗り出るように言われたけど、怒られるのが怖くて言えなかったのかもしれない。
自分の犯した罪に怯えていたのかもしれない。


かつての私の姿が重なる。


あの時の私と、あの時の生徒に言ってあげたい。


人間は完璧じゃない。
携帯の電源を切り忘れることもある。

次から気をつければいい。
同じ失敗を繰り返さないことだ。
そうすれば成長できる。


自分の不注意でピンチを招いてしまい、自分に腹が立ったり、「バレませんように」と祈る自分に少し愚かさを感じたりもしたけれど、そんな自分を許そう。


映画館で誰かの携帯の着信音が鳴るとイラついていた昔の私は、もういない。


でも、着信音が鳴って、電話に出て平然と話をしてたりしたら、それはちょっと駄目だと思います。