妊活4年目の日常

赤ちゃんに会いたい!

爆発する生徒と私

今週のお題「爆発」

私は高校で教員として働いている。
3年前に担任した生徒に、Aという生徒がいた。
Aはこだわりが強く、自分の思い通りにならないとき、怒りを爆発させる生徒だった。

普段は非常に真面目で、成績も優秀。
校則も守る。教員の指示に従い、掃除や日直の仕事も完璧にこなす。


何が問題?すっごい良い子じゃん。

初めは私もそう思っていた。

しかし、少しずつその子の特性が表出してきた。

掃除をサボる生徒を見て、顔をみるみるこわばらせ、大声で叫ぶ。
「ちゃんと掃除しろよ!!!!!」
爆発。

日直の仕事を忘れている生徒を見て、自分の机をグーで殴り、大声で叫びながら教室を飛び出す。
「あああああ!!!!!!!」
爆発。

このようなことが何度も、何度も、何度もあった。
Aは間違っていない。掃除はサボってはいけないし、日直の仕事はきちんとすべきだ。

でも、Aはほんの少しのミスも見過ごせない。とても神経質だった。学校も生徒も教員も完璧ではない。完璧ではない学校の中で生きるのがとても苦しそうだった。
学校だけではない、この世界は完璧ではない。


たびたび爆発するA。
Aを怖がる生徒もいた。
Aの神経質さに呆れる生徒もいた。
Aの言動が理解できず戸惑う生徒もいた。


私も怖かった。
Aを落ち着かせ、その子の周りの生徒も安心して過ごせるクラス作りを目指した。

クラスの生徒達はAを受け入れてくれた。
怖いから関わらないようにしようとする生徒もいたが、私はそれはそれでいいと思った。
Aを馬鹿にしたり、いじめたりする生徒はいなかった。

Aが教室の窓が全て閉まっているのを気にするので、窓際の席の生徒はいつも窓を開けておいてくれた。
掃除をサボる生徒はいなかった。
日直になった生徒は仕事をきちんとこなした。
それでも、黒板の消し方が悪いと言ってAが怒ることがあったが、それもクラスの生徒達は受け入れた。

Aは時々笑顔を見せるようになった。
クラスの生徒と話をしたり、勉強を教え合ったりする姿も見られた。

でも、ある日また爆発した。
教室を飛び出したあと、怒りが静まらないまま教室に戻り、クラスメイトの机を蹴った。

特別指導が行われた。
でもAは「なぜ自分が指導を受けなければならないのか」と言って学校を恨んだ。

なぜ自分ばかり指導されるのか。
なぜ他の生徒は指導されないのか。
そう言って教員を恨んだ。


自分の特性を理解してコントロールしよう。
自分も周りの人も傷つけてはいけない。


私はAが爆発する度に何度も何度も何度も伝えた。
でも伝わらなかった。
AにはAの、守るべきルールがあり、
それが守られなければ敵であり、ルールを守る自分はいつも正しかった。

その後、Aは進級して担任が変わった。
私は別の学校に異動になった。


あれから3年経った今でも思い出すし、今ごろAはどうしているだろうかと気になる。

Aの支援のために、スクールカウンセラー心療内科、療育施設、特別支援学校等、色んな人や機関に相談し、協力もしていただいたが、Aの過ごしやすい環境を作ることは難しかった。

あの頃を思い出すと、今でもどうすれば良かったのだろうか、と考え込んでしまう。考えて考えて考えても、結局答えは出ない。

答えが出ないのに考えてしまうし、悔しさなのか悲しみなのか怒りなのか、モヤモヤとしたものが心に現れてなんだかもう、爆発しそう。
爆発しそうです。